「しらけ世代」という言葉を聞くと、何かと無気力で現実的な印象を受けるかもしれません。けれど、その背景には激動の時代を経験した実感と、熱狂に流されない判断力があるのです。
学生運動の終焉、経済成長の停滞、テレビ文化の浸透など、社会全体が転換する時代を歩んだ人々です。政治よりも生活を重んじた彼らの選択が、現代の働き方や人間関係にも形を残しています。
本記事では、しらけ世代がどのように生まれたのか、その年齢層と特徴、そして現代への影響を整理します。
しらけ世代とは?意味と誕生の背景
1960年代後半の学生運動が鎮まり、社会全体が日常へと戻ります。理想を掲げた運動が衰えると、若者たちは一歩引いて現実を観察するようになりました。この態度を指す言葉が広がり、「しらけ世代」と呼ばれるようになったのです。
しらけ世代は、おおむね1950~1964年生まれの人々を指します。団塊世代とバブル世代の間に位置する世代で、成長と安定のはざまで育ちました。政治よりも暮らしを優先し、日常志向を強めていった人々です。
テレビと雑誌が家庭に普及し、関心は身近な領域へ移ります。大学紛争の映像を目にしても、多くは家庭のなかで静かな秩序を選びました。この冷静さと現実性が、しらけ世代の最大の特徴となるのです。
しらけ世代の年齢層と当時の時代背景
学生運動が衰え、社会が安定へ向かうなかで青春時代を過ごしたのがしらけ世代でした。1950~1964年に生まれた彼らは、経済成長の輝きとオイルショックの混乱を共に目撃しながら、理想に偏らず事実と向き合う価値観を育てていきます。
こちらでは、彼らが歩んだ時代背景と、その経験が生き方にどう影響したのかを確認していきます。
成長と混乱を見届けた青春期
前期しらけ世代は、1950~1955年生まれです。彼らは大阪万博(1970年)や沖縄返還(1972年5月)を体験し、国家の発展と希望を肌で感じました。中期から後期のしらけ世代は、あさま山荘事件(1972年2月)やオイルショック(1973年)による雇用不安に直面し、将来を現実的に考える堅実さを身につけていきます。
経済の拡大と停滞をどちらも知ることで、派手さより安定を重んじる生き方が自然に定着し、落ち着いた判断力が時代の基調をつくられました。
理想から現実へ移行した価値観
大学紛争や連合赤軍事件など、理想の行き過ぎがもたらした混乱を目にした若者たちは、社会への期待を静かに手放していきました。政治の熱狂よりも、家庭や職場で日々を整える姿勢が評価されるようになります。
組織での協調や計画性の重視、穏やかに調和を保つ態度が自然に根づいていったのです。現実と折り合いながら生きる力こそが、この世代が身につけた最大の成熟だったのです。
しらけ世代の特徴と価値観
しらけ世代の特徴は、情熱を控えめにし、現実を丁寧に観察する姿勢に尽きます。政治への距離感と実利主義的な働き方が、この世代の基調となっていました。
こちらでは、その特徴を二つの側面から確認していきます。
政治離れと現実志向
当時、「三無主義」という言葉が流行し、熱狂から冷徹へと転換していきました。運動の行き止まりを目撃した若者たちは、目の前の暮らしに力を注ぐようになります。進学は偏差値で判断され、就職は計画的に進められるようになりました。声を張る代わりに、綿密な準備と段取りで成果を示す傾向が広がります。
参考サイト:文春オンライン
このような流れは、現実的な選択肢の絞り込みであり、冷淡さの表れではありませんでした。極力無理をせず、着実な継続で形にしていく姿勢が定着していったのです。
個人主義と調和のバランス
個人の価値を尊重しながら、波風を避ける運び方が自然に定着していきました。役割を確実に果たすことを重視し、無理な前進は控えるようになります。文化は視線を身近へ向け、個人の関係を丁寧に描くようになったのです。会議では対立を表面化させず、事前の調整で衝突を最小化させていました。
表向きは穏やかに、内実の合意のもとで場を進めていく。こうした姿勢が、和を保ちながら個を生かすバランスを生み出していったのです。職場ではノリより信頼を重んじ、計画性で遅延を防ぐようになります。衝突を最小化し、継続で成果を積む態度が組織全体で共有されていました。
しらけ世代が現代に与えた影響
しらけ世代の冷静さと現実性は、企業と私生活の両面に今も形を残しています。
こちらでは、その影響を二つの側面から確認していきます。
バブル期以降の企業文化への影響
終身雇用と年功序列の下で、与えられた役割を確実に果たすことが評価されていました。彼らは調和を乱さず、効率と計画性で現場を支える働き方を定着させます。安定を重んじた結果、変革が鈍る場面もありましたが、慎重さと調整力は組織にとって貴重な資産でした。
景気の波に左右されず、限られた資源を正確に配分していったのです。バブル崩壊後も、冷静な判断で経営体制を維持してくる。派手さより継続を重んじる働き方は、日本企業の安定性をつくり出す源となっています。
冷静さと中庸の価値観が残したもの
政治でも恋愛でも、一定の距離を保ちながら関係を構築していく。SNS時代でも範囲を絞り、衝突を避けながら交流を続けるようになります。炎上を避け、必要な関係だけを穏やかに続けていく姿勢が広がっているのです。
個対個を重んじる意識は、今の人間関係にも受け継がれています。集団の熱より日常の安定を選び、心の落ち着きを保つ。こうした成熟の形は、現代社会でも価値を持ち続けているのです。
まとめ
しらけ世代は1950~1964年生まれを中心とする世代です。熱狂の後に現実を見る姿勢が、仕事と生活全般に定着していきました。学生運動の余韻が残る時代に、声を張るのではなく穏やかに生きる選択をした人々だったのです。
安定志向と個人主義は現代にも続き、働き方や人間関係のなかで静かに影響を与え続けています。派手さよりも確実さを重んじる姿勢は、日本社会の基調として今も機能しているのです。この世代が選んだ冷静さは、無責任ではなく、激動の時代を生き抜くための知恵だったのだということを、現代に生きる私たちはもっと理解してもよいのではないでしょうか。








